すえながばしクリニック　糖尿病とは

2017年に発表された国民健康・栄養調査の結果では、「糖尿病が強く疑われる人」約1000万人、「糖尿病の可能性が否定できない人」約1000万人と、糖尿病かその予備軍の合計が約2000万人と推定されています。国民の6人に1人が糖尿病または糖尿病予備軍といわれており、まさに国民病ともいえるでしょう。

糖尿病は誤解の多い病気です。「甘いものをひかえたら糖尿病にならない」「やせてている人は糖尿病にならない」「尿に糖がでなければ糖尿病ではない」などよく耳にしますが、これらは全部間違っています。甘いものが嫌いな人や、やせている人、尿に糖がでていない人でも糖尿病の人はたくさんいます。そもそも糖尿病（尿に糖がでる病気）という病名自体が、誤解を生む原因といえるかもしれません。

からだの細胞は、血液中のブドウ糖（血糖）をエネルギーとして利用したり、貯えたりしています。そのためには、すい臓でつくられるインスリンというホルモンの働きが必要です。インスリンが十分につくられなかったり、インスリンの効きが悪くなってくると、ブドウ糖がうまく利用されず、血液中にあふれた状態（高血糖）になってしまいます。このような状態が糖尿病です。

生まれつきの体質に加え、食べすぎ・飲みすぎ・運動不足・肥満・ストレスなどが重なっておこります。体質や生活環境の似ている家族の方も注意が必要です。

糖尿病の症状として、のどが渇く・トイレが近くなる・疲れやすいなどがありますが、初期はこれらの自覚症状が全くありません。このため発見が遅れたり、発見されても本人の自覚がなく放置されることが多いのです。

血糖値が高い状態を放っておくと、5～10年のうちにいろいろな合併症がでてきます。合併症は大きく2つに分けられます。「糖尿病の人だけにおこる合併症」と「糖尿病以外の人にもおこりますが、糖尿病の人により多くおこる合併症」です。前者は、網膜症・腎症・神経障害の3つで、糖尿病の3大合併症といわれています。後者としては脳卒中や心筋梗塞などがあり、この原因となる動脈硬化は、糖尿病予備軍（境界型）の段階からすでに始まっているといわれています。

糖尿病は、発症すると完治することは難しく、一生付き合っていかなければならない病気です。しかし、ここであきらめることは全くありません。きちんと血糖をコントロールしていけば、健康な人と変わらない日常生活が送れますし、ほとんど合併症をおこすこともありません。血糖をコントロールする方法には、食事・運動療法や薬物療法（飲み薬やGLP1アナログ・インスリン注射）があります。合併症を防ぐために、HbA1c（ヘモグロビンエーワンシー）7.0％未満をめざすよう心がけましょう。